RITA LABOでは、稲盛氏の前半生にスポットを当て、「稲盛和夫さんの生き方に学ぶレジリエンスの授業」を開発しました。実践協力校での実証実験の結果を反映し、このたび、教案として公開します。ご自身の現場で活用いただければ幸いです(実践いただく際、お問い合わせフォームまでご一報いただけると助かります)。

「稲盛和夫さんの生き方に学ぶ」レジリエンスの授業

京セラ及びKDDIの創業や、JALの再建といった経営者としての顔とともに、盛和塾での後進の育成や、京都賞の創設等、社会的活動でも知られる稲盛和夫氏。しかし、氏の人生は決して、順風満帆だったわけではありません。特に青少年期は、中学・大学受験を失敗、結核にかかる、など、苦難の連続でした。氏は、その苦難を折れない心で潜り抜けただけでなく、苦難を自らの試練と捉えて正面から向き合い、成長のバネとしてきたように見えます。

何度も挫折し、思い悩みながらも立ち直り、自分の道を選び取ってきた稲盛氏の生き方は、保護者からまさに守られ大切に育てられたからこその“弱さ”をはらんだ、現在の中学生~大学生(ファーストイヤー等)に、実社会で生きていく勇気を与えてくれるのではないでしょうか。

  1. 狙い
    少年期から青年期にかけて、多くの挫折を味わいながらも、逆境から学び、あるいは逆境を受け入れて前進し、京セラを創業した稲盛和夫氏。本授業では、そんな氏の生き方からレジリエンス(折れない心・復活力)やPTG※について学ぶとともに、稲盛氏および仲間(クラスメイト)の視点・考え方を知ることにより、「同じ事実も、人によってさまざまな捉え方がある」「視点・考え方を変えれば、問題解決の道は必ず開ける」「失敗や挫折・苦難は成長へのステップである」というマインドセットの重要さに気づき、共感・理解することを狙いとしています。さらに、子どもたちが自らの「逆境からの立ち直り体験」を振り返り、仲間に語ることで、自分自身の「失敗から立ち直る力」「試練を乗り越える力」を再確認、「人生にはいろいろなことがあるが、自分は乗り越えていける」という自己肯定感・自己効力感を醸成していきます。併せて「他者に貢献すること(利他の心)」がレジリエンスを高めることを知り、利他の心の大切さに気づいてもらうことを、ストレッチ目標としています。※心理学や精神医学の分野では、失敗や苦難から学び成長することを、PTG(Post-traumatic Grow 心的外傷後成長)と呼びます。
  2. 中学生向け45分×3回の授業の教案
    レジリエンスの授業教案
    レジリエンスの授業1時間目スライド
    レジリエンスの授業2時間目スライド
    レジリエンスの授業3時間目スライド
    レジリエンスの授業ワークブック
    レジリエンスの授業ワークシート
    レジリエンスの授業グループワークシート
    レジリエンスの授業レジリエンスのしおり

「JAL社員の働き方に学ぶ」授業

経営破綻から二年半で再上場を果たしたJAL再生のプロセスについて
“社員の働く意識がどう変わったか”から捉えなおし、フィロソフィ―教育を
ベースに企業理念・フィロソフィが全社員に共有されることの意義を学び合う

稲盛経営哲学研究センターにおいて、RITALABOは、研究と社会をつなぐオープンラボの役割を担っています。2010年1月に経営破綻した日本航空株式会社の2年8ヶ月という史上最速のスピードでの再上場とその後の黒字経営を支える「フィロソフィ教育」について、RITA LABO客員教授・金井文宏と客員助教・谷口悦子が行った研究「JAL再生を先導した哲学・教育プラットフォーム」の成果を教育現場に還元するために、JAL社員の働き方に学ぶ授業案を開発、実施しました。

現在の日本人にとって、最も一般的な「会社や組織に所属して働く」という働き方は、生徒たちからは見えにくく、ニュースや大人たちから聞く「長時間労働で大変そう」「自分の意見を言えず、命令に従うだけ」というイメージが先行しています。

しかし実際は、労働によって社会や人々の役に立つという実感を得たり、生きがいや思いを実現し、「生きる力」が鍛えられる場でもあります。そのような企業の現場について生徒たちに理解してもらうことを目的に、教材開発を進めました。

  1. 狙い・意義
    企業や組織等に雇用されるという就労形態は労働力人口の8割を超えており、生徒たちが将来進路選択の岐路に立つ際にも、企業に就職することを選択肢の一つにする者もかなりの割合を占めると考えられるものの、普段生徒が企業で働くことを具体的に知り、そこで働く可能性が高いということを意識する機会はほとんどない。立命館大学OIC総合研究機構盛経営哲学研究センターは昨年度よりセンター研究プロジェクトの一つとして、「日本航空株式会社(以下JAL)再生哲学・教育プラットフォームの研究-JAL社員の意識・行動改革を支えた教育基盤」を立ち上げた。稲盛和夫氏のJAL会長就任によって、戦後最大の倒産から史上最速で復活を遂げた再生過程における、意識改革のプロセスと教育プラットフォームの果たした役割を解明することを目的とし、RITA LABO金井・谷口が担当している。1学期の「稲盛氏の青少年期に学ぶレジリエンス」の授業では、進学、就職と人生の節目に逆境に陥った稲盛氏が、考え方を″思いっきり″変えて、ポジティブに生きる姿に学んだ。特に、倒産寸前の企業で、稲盛氏が研究職に留まり、実験に没頭して会社を救うことにもなることを伝記から読み取り、考え方や思いが重要ということを確認した。今回の一連の授業では、倒産を乗り越えたJAL社員が、考え方や行動を変え、どのような思いで働いているのか、「お客さまに世界一愛される航空会社になる」という企業目標をJAL社員全員が共有して、JALフィロソフィに基いて働く姿を紹介する。一人ひとりの社員が考え方を変えると会社という組織全体の考え方が変わり、企業再生ができることを学ぶ。
  2. 中学生向け45分×4回の授業の教案
    JAL授業1時間目教案 JAL授業1時間目スライド JAL授業1時間目ワークシート
    JAL授業2時間目教案 JAL授業2時間目スライド JAL授業2時間目ワークシート
    JAL授業3時間目教案 JAL授業3時間目スライド JAL授業3時間目ワークシート
    JAL授業4時間目教案 JAL授業4時間目スライド JAL授業4時間目ワークシート