稲盛和夫がJALを救った虎の巻

稲盛和夫がJALを救った虎の巻

作者:王育琨
引用元サイト名:「稻盛和夫拯救日航的秘笈」『人民日報海外版』『中国経済週刊』(2011年第50期)
URL:http://finance.sina.com.cn/roll/20111227/004111067662.shtml
日時:2011年1月14日

張 心怡  訳
松村 淳 構成

 

著者 王育琨

ビジネス哲学者、マネージメントとエムアンドエーの専門家
清華大学長三角研究員中国企業家思想研究センター主任
グローバル・エムアンドエー研究センター学術委員
山東大学経営管理学院、南京航空航天大学経営管理学院 特任教授
企業・グループの顧問

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稲盛和夫氏がゼロから起業した二つのフォーチュン・グローバル500の会社は、今となってはもう古い伝説だ。しかし最近の功績は、彼が単身赴任して1人の力で日本航空を救ったことだ。

2010年2月1日、稲盛氏は倒産の保護政策を申請した日本航空を引き継いだ。2011年3月まで、世界中の航空会社の中で、日本航空は利潤率第一位の記録を更新した。今現在、「人荒(人材不足)」、「钱荒(資金不足)」、「电荒(電力不足)」、「心慌(心が慌てる意)」に困惑している中国企業に対して、改めてこの事例の背後に隠れているパスワードを整理すれば、中国の企業家たちはもっと実感を持って、喚起されるだろう。純粋だからこそ、威厳があるのだ。

稲盛氏が日本航空を受け継ぐという決定は、すごく冒険的だ。会社は倒産に直面し、人材が流失し、管理職はだらだらと仕事をし、腰を据えて落ち着いて働く人は誰もいない。人の心が死んでしまったら、神様が来ても仕方がない。稲盛氏は困難、先入観、経験、手段、身分、混乱、無効率、責任のごまかしなど、すべて太平洋に捨てたのだ。彼はただ素人のお年寄りだ。完全な初心者だが、他の経営者から航空業界の管理の技を積極的に学んだ。彼は事実を知り、体験し、検証するため、命を懸けて準備をした。彼は純粋な視点から人とモノを見るので、従来とは異なる発見と果敢な力を持つようになった。

採算が取れない航路は、社会に必要とされない。従って削減されるべきだ。しかし、この決定を下すのが難しい。なぜなら稲盛氏のような絶対的な権威を持つ人が少ないからだ。日本人は決断を下すのが苦手だ。日本企業の体制は、終身雇用制だ。日本人はたくさんのお金を持たなくてもいいのだが、仕事は必ず失ってはいけないものだ。50%の航路を削減することに伴うのは、誰でも直面したくない現実である。その現実はリストラを実施することだ。稲盛和夫氏はこの面について、考え尽くした。考える中で彼の中の慈悲の心と知恵は、絶えず湧いてきたのである。

17000人がリストラされたが、170人だけ仕事がない

リストラは、するかしないかという問題ではなく、生きるためにそうしなければならない冷徹な事実だ。稲盛氏は6000社に協力を依頼し、リストラされた失業者に仕事を手配した。最後、170人だけその社員に起因する理由で仕事は手配されなかった。稲盛氏は会社を去った人に対して、「あなたたちは日本航空を救った功労のある人物だ」「あなたたちの巨大な犠牲のおかげで、日本航空が改めて出発する機会をもらえるようになった」と言った。会社を去った人たちは、十分なリストラ手当をもらい、再就職もできた。稲盛氏と日本航空へ深い感謝の気持ちがあるから、心も落ち着くのだ。稲盛氏も日本航空の社員とともに、「リストラされた人々が一日も早く会社に帰れるように頑張る」と誓った。

考え方を変えない人を、人事異動した結果、管理層50%の人事異動が達成された。稲盛氏は部門ごとに会議を開いた。彼は心を落ち着かせ、問題のあるところを聞いたら、直接言って、示して、参与者の「面子」を放っておいた。

もしあなたが考え方を変えないなら、下にはたくさんの人があなたのポストが空くのを待っているから、あなたを他所の部署へやる、でも給料や福祉利益は減らさない。稲盛氏は仕事の態度を否定するが、その人本人を否定することはない。午前の会議では厳しく叱るが、その夜、自分のお金で彼らに夕食を振る舞って、彼らの気持ちを落ち着かせるのである。

 一人一人の社員が醍醐味を味わうように

日本航空を再建するのに難しかったことは、どうやって稲盛氏自身の考えと精神を一人一人の現場の社員まで徹底するかという課題である。多くの企業家にとって、それは難しいことだが、稲盛氏にとっては、手を出せばたちまち捕えてくるものだ。時間がある限り、彼は現場の社員の中に行き、彼らと交流したり、握手したり、社員の意見に耳を傾けたりする。それは彼が社員に近づくための主たる方法だ。三か月の間に、彼は全ての日本航空の社員と会って、握手をし、挨拶をしたのである。

こうした挨拶のやり方は、パンチェン・ラマがチベットで信仰者の頭を撫でる「摩頂」という儀式のようだ。たくさんの信仰者は頭が撫でられた後、自分の貯金をすべて寄付し、長時間興奮状態になる。一旦、人と人の間に、心と心をつなげたら、そこから出てくるエネルギーは測りしれないのだ。

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