華為(ファーウェイ)は生命企業(注)からどれ程の距離があるか

華為(ファーウェイ)は生命企業*からどれ程の距離があるか

*持続可能な企業、百年企業の意味

作者:王育琨

引用元サイト名:「华为离生命企业有多远?」 财经频道滚动新闻

URL:https://zhidao.baidu.com/question/239387698215717364.html
日時:2013年04月19日08:56

張 心怡  訳
松村 淳 構成

 

著者 王育琨

ビジネス哲学者、マネージメントとエムアンドエーの専門家
清華大学長三角研究員中国企業家思想研究センター主任グローバル・エムアンドエー研究センター学術委員
山東大学経営管理学院、南京航空航天大学経営管理学院 特任教授
企業・グループの顧問    

癸巳年(2013年)の春は、中国夢(習近平が提出した、中華民族復興を目指すために頑張ること)が実現される季節だ。ファーウェイは近日、審査済みの2012年度報告書を発表した。報告書の最後には、最近任正非氏(ファーウェイの創始者、CEO)が発言した内容を引用し、退屈な数字に魂を注いだ。任氏は「‘力出一孔,利出一孔’( 力出一孔ひとつの穴(孔)から噴出する水に似て、たとえ一人ひとりは微力であっても、それを結集することで驚くほどの結果を生み出すことができる。)という原則が継続されていくならば、ファーウェイは次の時代の敗北者にはならない。もし“力出一孔”“利出一孔”の原則を油断にしたら、ファーウェイは次の敗北者になるかもしれません。歴史上の大企業は、転換点を超えたら下り坂に入り、好転することは少ない。

私たちは敗北者になりたくなければ、必ず克己復礼(《「論語」顔淵から》私情や私欲に打ち勝って、社会の規範や礼儀にかなった行いをすること。をし一致団結し、努力して奮闘しなければならないのだ」と言った。

今年、ファーウェイは「戦略重視、経営のスリム化、効率性向上」を実行している。任正非は「力出一孔」という言葉を使ってファーウェイの戦略を述べた。

曰く、「美人のような水」(穏やかな水の意か)は、高度に加圧して小さな穴を通過させることで、スチールの板さえ切断することができる。同じように、ロケットの燃焼による高圧の空気は、ラバール・ノズルと呼ばれる装置の小さな穴から突風を生み出し、そこから噴出した空気が人類を宇宙へと送り出すのだ。そう考えると「力出一孔」の大きな威力が分かってくるだろう。

「利出一孔」(利益をひとつの源から得る)は、「力出一孔」(力がひとつの小さな穴から生まれる)の保障になるのだ。ファーウェイは組織的、制度的に、管理部門の幹部から現場の従業員まで、関連取引により発生する会社の収益から個人の利益を得たり、集団の利益を盗んだりする間隙を塞ぐのだ。任正非氏は「20年以来、ファーウェイは基本的に『利出一孔』であった。それで15万社員が一致団結をし、奮闘するようになった。私たちは勝てないことがない」と言った。

中国企業の中で、社員を優待することについて、ファーウェイは唯一無二なのだ。任正非氏は会社の株を社員たちに配ることをやり通し、自分は1.39%の株しか持たなかった。たくさんの人が裕福になる夢を実現させるように、彼は一番多い給料、株、奨励、光栄を与え、さらに出張旅行費を報告する時にも出来うる限りの便益を図った。

裕福になる夢がかなったファーウェイ社員は富以外に、さらに何を持つことができるのだろうか。創造力を徐々に失ったベテランの社員がポジションを占め、新入社員は自分の才能を発揮できなければどうするのか。物質的利益を最大化にする方法を通して刺激を与えるには、限界があるのだ。

ファーウェイは戦略のスタート、チャンスの把握(通信業界の復興と低コストの製造)という側面において勝利した。成功ということは、すべてに慣性が生じるようになり、結局、自分で積み上げる堆積物によって企業の生命が短縮された。そのように、ファーウェイの企業の命に圧力が掛けられ、潰された。したがって、ファーウェイは気まずい問題に直面している。それは今現在、持続不可能な慣性を続けていくならば、振り返る時、どこに向いていくのか一時的に分からなくなるのだ。ファーウェイはどんな方向に振り返ればいいのか

ここで中国企業の核心的な問題に触れる必要がある。今現在、企業を取り巻く環境の文脈の中で、皆はきっとどこかが悪いということを知っている。しかし、問題をどう提出するのか分からない。これは癌、SARS、鳥インフルエンザなどといった複雑な病気に直面した時、人はどうすればいいのか分からないのと同じだ。この問題をはっきり解釈するように、経済・社会のコンテキストから飛び出し、もっと広い視野を持つことが重要である。人はなぜ生きている?企業はなぜ存在する?

今から2900年前、老子の深いまなざしには、人類の苦痛と憂いが含まれていた。彼は、天地の間は大きな鞴(ふいご。火力を強めるために用いる送風装置。真空から尽きることなく万物が生み出され、動けば動くほど溢れ出てくるとされる)のように働いていて、すべての善や悪、災いや福は、瞬間的に転換してしまう。つまり、すべては一刻も止まらず揺れているというのだ。人生の全ての迷いと躊躇は、三つの基本問題に基づいている。「名誉と生命はどちらが大切ですか」「生命と財産はどちらがより重要なのですか」「得ることと失うことはどちらがより苦しいですか」という、この三つの基本問題が本末転倒したため、世の中の人々は狂おしいほど迷っているのである。

生命を軸にする。それが、しっかりしていてこそ進むべき道が見えてくる。今現在、迷路から脱出するための要点は、生命意識の覚醒にあるのだ。

日本の経営の神様、稲盛和夫は現実的な答えを与えた。職人の心を、会社の些細な営みに満たしている。稲盛和夫は技術者出身だから、もともとは職人だ。職人の心と魂はどれ程会社に働くのか、彼はとてもよく分かっている。彼は会社を設立後、職人の心を持ち、職人のように働き、職人の魂で働き、それが会社のオーラを作ったのである。

稲盛和夫の法宝(魔法)は、人の生命の意識を喚起し企業の唯一の目標を、生き生きとした生命を蘇らせることにした。彼は、「人生唯一の目標は魂を磨くことなのだ。生命の幕が下りる時、始まる時より少し高尚になるように。美しい心を作るためには、心を磨かなければならない。心を磨くには一生懸命働かなければならない。このような苦労は、あなたの心と魂を磨くためで、神様があなたに与えるプレゼントだ」と言った。

そのように、彼は生命が精進する具体的な道筋を出した。各ポジションの利益を最大化にして、費用を最小化する。彼は理論を言わない。具体な事例から生命の覚醒があるかどうかを見るのだ。

彼はアメーバのような組織形式を作って、職人の魂を極限に発揮した。アメーバは会計採算のシステムであり、評価が厳しい。仕事の当日にすぐ評価が分かるようになり、単位時間の中でどれくらいの付加価値を生み出したのかが分かる。しかし、この評価はあなたの当期の収入と直接には結び付かない。アメーバの評価は三つの基準がある。一つ目は、縦の角度からだ。あなたの仕事は過去よりどれくらい高められたのか、どれくらい精進したのかということ。

二つ目は、個人を評価するではなくて、チームを評価することだ。一人一人が単位時間以内に生み出した付加価値は平均であり、小人数のチームが大人数のチームに対してどれくらい貢献したか、ということも評価する。

三つ目は、社員が散乱したチャンスを整え、合わせる能力を評価する。すなわち、ある社員が偶然的なチャンスを捕まえ、チームに最大の効率と利益をもたらせるかどうかということだ。この三つを合わせると、アメーバの採算システムの実質が浮き彫りになる。つまり、一人一人の生き生きとした生きがいを刺激し、取り出すことだ。

過去の三十年間の高速的な成長は、略奪式に外部化した資源(人、お金、モノ)を消耗していた時期だ。ファーウェイの困惑は一層その事実を証明した。中国企業は外在化された富の規模から、「生命企業」(持続的な企業)に転じるべきだ。人は道具ではなく、逆に目標の対象となる時、企業は利益のお皿ではなく、生命が精進する修行場になる時、中国人は幸せかつ尊厳のある生活を送れるようになる。その時、中国人の生命は極大な豊かさを得られるのだ。

 

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